古民家と呼ばれる古くて大きな昔の住まい。
農業と養蚕がさかんだった地域にある立派な大屋根の民家から・・
端正な武家屋敷、
防火の工夫がしてある町屋や商家。
内部には大きな梁がかかっているもの、
そうかと思うとおしゃれな古民家カフェになっていたり。
古民家はいまやテーマパークといった趣もありますね。
でも・・
『古民家を見るのはいいけど、暮らすのはちょっと大変そう』
そう感じませんか?
『昔の人って大変だったのねぇ~』
こういった感想は古民家園でも良く聞かれます。
100年前まで当たり前のようにその中で暮らしていた古民家。
そこには地域の気候に合わせて快適に暮らせるような工夫があります。
昔の日本人が特別に我慢強かっただけではないんですね!
この記事では、古民家に見る『季節を乗り切るための暮らしの知恵』をご紹介いたします。
家づくりの時にちょっと思い出してもらえれば嬉しいですし、民家園や古民家カフェに行ったときに「ふむふむ」と見ていただけると、また楽しみが広がると思います♪
古民家とはどんな家?
民家とも呼ばれる昔の日本の住まい。
戦後に一つ一つの土地が狭くなり、家に防火性能が求められるようになっていった過程で急速に失われていきました。
地域によって形は違いますが、
家のつくりは基本的に風通しがよく、シンプルです。
古民家と現在の住宅の大きな違い
冒頭での疑問、
『古民家で暮らすのは大変では?』
と感じるのは、
現在の住宅がエアコンや気密性の良いサッシを装備しており、
『周囲の自然環境から家の中の人を守る』
という考えを前提で作られているから。
これに対し、地域の気候風土に合わせて作られた古民家は
『自然環境に逆らわず、上手に取り入れながら暮らす』
というのが前提です。
電気やガスが無かった時代です。
周囲の自然をうまく取り入れて快適に過ごす知恵や工夫が沢山つまっている建物。
それが古民家なのです。
古民家は地域の特色を表している!
古民家は土地の気候風土に合わせて作られています。
例えば、有名な白川郷の合掌造り。
急こう配の屋根は、積雪が多く雪が重いというこの地域の冬の気候のため。
また、養蚕が盛んだったことから屋根裏部屋が蚕の生育に適したように改造されていきました。
妻の開口部で風と光を取り込むことで蚕の飼育に適した環境が作り出されています。
生活の機能が家の形となっているところに合掌造りの美しさを感じることができます。
引用:白川町役場HP
とっても大きな家だと思いますよね。
だけど40~50人が一軒の家に同居して暮らしを共にしていたという話もあります。
わたしなど義母一人との同居で精いっぱいですが・・
やっぱり昔の人は我慢強かった?
同じ農家でも風通しを重視した関東のものとだいぶ違います。
冬の寒さが厳しい東北の民家には、こんな工夫も。
下の方に稲わらを巻き付けて防寒しています。
むっくりして可愛い感じになってます。
このように、その地方の特色を良く表しています。
だから古民家の集落や街並みは周りの自然と調和しているんですね。
以前暮らしていた茨城県の古河市。
旧武家屋敷の前を整備して趣のある遊歩道にしています。
千葉だと「房総のむら」がおすすめ。
移築した古民家で街並みがつくられています。
紹介記事はこちら↓
【房総のむら】は江戸の街並みやものづくり体験が楽しい夏休みおすすめスポット!
古い家に見る快適に暮らす知恵
ここからは昔の人が長い年月をかけて紡いてきた、
暮らしの知恵についてご紹介したいと思います
昔の家・建物の工夫とは?
深い軒には理由がある!
日本家屋の特徴でもある深い軒。
軒(のき)とは
建物の外壁面より外に突出している屋根の部分。
一般に軒というと屋根の延長部分を指し、庇とは区別される。引用:建築・住宅養護集
軒は、現在の住宅だとあってもほんのわずかだったり、ほとんどなかったりと
住宅デザイン・コストの関係で削られたりしてあまり重視されていない部分です。
軒にはきちんとした効果があります。
まず、夏の強い日差しを和らげます。
エアコンの無い時代、夏の暑さは家の工夫でしのぐしかありません。
実は、軒のある・なしは現在の住宅の省エネ計算でも重視されるポイントです。
また、外壁を雨風から守り家を長持ちさせる効果があります。
昔の家の外壁は土壁の上に漆喰や板を張って風雨をしのいでいました。
こういった材料は雨や経年変化に弱いので、基本的には取り換えることを前提で作られています。
雨が当たれば雨漏りする、直射日光があたれば劣化する。
こういったことを昔の人は良く承知していて、材料を長持ちさせる工夫から日本の家のデザインが生まれてきました。
深く軒の出た瓦屋根の連なる景色は日本の原風景となっています。
これは、日本が世界有数の雨の多い国であることと無関係ではありません。
障子・夏と冬でモードを変える
障子は
- 熱さ寒さを和らげる断熱材の役割
- 光を拡散させて部屋を明るくする役割
など、それ自体に部屋を快適にする効果があります。
冬寒く、夏蒸し暑い内陸の気候。
特に京都の市街地にある町屋などは家の密集しているので夏の暑さがこたえます。
昔から冬は紙障子をはめ、夏は障子を取り外したり格子戸にチェンジしたりして涼をとっていました。
ちなみに、その障子など「戸」をしまっておくために必要な部屋が「納戸」です。
加えて、障子紙の部分が取り外し可能で夏と冬でモードの変えられる障子があります。
大阪障子と呼ばれています。
冬は普通の障子として部屋の暖かさを保ち、夏は「格子」になり風を通すことが出来ます。
障子・格子・全開といろんなモードが楽しめます。
格子って涼し気ですよね(^^♪
夏と冬でモードを切り替えることができるこういった障子、京都など蒸し暑い地方をはじめ全国で今でも使われています。
涼しくする工夫としては、効率よく家全体に風を通す欄窓(らんまど:天井付近にある高窓)や地窓(じまど:床付近にある窓)も。
現代の住宅で取り入れたいアイテムです。
広い縁側は外部との緩衝地帯!
昔の家といえば、そう、
縁側ですね。
縁側も軒と同じく、室内が暑くなるのを防止する効果があります。
縁側の上には必ず軒やヒサシがあります。
これは、夏の直射日光を避け、太陽高度の低い冬の日差しを取り込むため。
また、縁側という緩衝地帯があるために室内にいる人にとっては冬の寒さが和らぎます。
もちろん、エアコンの普及した現代の家では必要ないかもしれません。
でも、縁側はそれだけではありません。
外の景色を取り込んで、室内の狭さを解消する効果も!
個人的にはこの解放感がたまらない~!と思ってしまいます。
土間・土壁は家の除湿装置
古民家を訪れると、ひんやりした冷たさを感じることがあります。
あれ、エアコンないのに涼しい?
これは、土壁や土間が梅雨時や夏の嫌な湿気を吸い取ってくれているからなのです。
その効果は梅雨時にエアコンなしで洗濯物が乾くほど!
昔の家・敷地全体を利用する工夫とは?
日本の家は、建物だけでなく敷地全体を活用して快適な室内環境をつくっています。
敷地全体を活用して涼風を取り込む「坪庭」
京町屋などで見られる坪庭は家の冷却装置としての機能があります。
細長い敷地に横幅一杯に建っている町屋。
蒸し暑い夏でも横からの風はのぞめません。
しかし、敷地の中央や奥の方に坪庭を設けると、
坪庭の冷えた空気と表の暑い空気との温度差から風の流れが出来て家屋全体に風が通ります。
つまり、風を導く効果があるのです。
他にも密集地の暗い部屋に光を取り込む「照明装置」の役割もあります。
狭い敷地の中につくった小さな庭ですが、町屋には無くてはならない環境装置です。
強風から家を守り、家づくりの材料にもなる「屋敷林」
台風や強風から家を守る屋敷林も自然を利用した快適に暮らすための装置です。
富山県西部の砺波平野の農家では家を守るために巡らせた屋敷林を「カイニョ」と呼び、独特の風景をつくっています。
散居村の農家を包むようにして生えている屋敷林のことをカイニョ、またはカイナといいます。
砺波地方には「高(土地)は売ってもカイニョは売るな」という言葉が古くから伝わります。これは立派な屋敷林に囲まれて住むことを誇りにして、先祖代々からの屋敷林を守り伝えようという意味です。
引用:砺波市公式観光サイト
「カイニョ」などの防風林は家を風雨から守ることの他に、
- 目隠しとして
- 冬の寒さをやわらげ、夏涼しく生活するため
- 家の建て替えや家具の材料といして
- 焚火を燃料として使う
などの目的を果たしていたそうです。
また、栗や柿など実のなる樹も欠かせないそうで、収穫の季節が楽しみだったでしょうね。
古民家に見る暮らしの工夫のまとめ
ここで挙げたのはほんの一部の例ですが、
機械や電気に頼ることの出来ない時代、自然の力を借りて暮らしの工夫をしていたことがわかります。
昔の暮らしは不便なだけではなく、
季節の変化や自然のリズムを感じる暮らしだったのかなあとおもいます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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