和の住宅で美しく暮らす・和室は「天井」にセンスがあらわれる

洗練された和モダンの住宅をつくるためのヒントを

日本伝統の茶室や数寄屋からひもといて、

そのエッセンスをご紹介しています。

 

今回、取り上げたいのは「天井」です。

 

天井というと、床や壁などに比べ

住宅の中でも重要視されていないパーツかもしれません。

 

でも、天井にこだわると、

空間がぐっとハイセンスに感じられるのです。

 

そこで今回は、茶室や数寄屋に見る美しい天井や、

ローコストでもできる、住宅で取り入れられる

天井デザインのご紹介をしていきます。

 

和室はもちろんですが、洋室の玄関、廊下でも

実は天井のデザインは重要なポイント。

 

実例を交えながらご紹介してゆきますので、どうぞ最後までお付き合いください。

天井に一番気を使ってきた、日本の建物

あなたの暮らす部屋の天井はどんな仕上げでしょうか?

 

洋室なら白系のクロス貼り、和室なら板やボードというのが

最近の住宅やマンション、アパートでは一般的です。

 

天井は平らなのが普通で、あまり個性のあるパーツには感じないのも事実。

 

でも、日本の伝統的な建築というと昔から天井に凝ったデザインのものが多くあります。

伝統的な日本建築で見られる天井をご紹介したいと思います。

 

竿縁天井

竿縁と呼ばれる細長い木材を一定間隔で渡し、

その上に、直交するように薄い天井板を並べたもの。

和室天井のスタンダードです。

 

数寄屋だと、この竿縁天井ももう一ひねりしたデザインのものがみられます。

こちらは竿縁を細くして仕上げに漆を塗ってています。

ちょっと艶っぽい感じですね。

 

※数寄屋というと厳密には茶室のことですが、

広くは茶室のあるような建物の全体、

また茶室にこだわらず、建て主さんがこだわって作った日本家屋を指して使っています。

 

同じ竿縁でも、板の材質や木目で印象が変わってきます。

こちらは格式の高い部屋で、樹齢何百年という木からとった板を使っています。

 

上に張る板の幅でまた印象が変わってくるので、比べてみると面白いですね。

 

竿縁天井でも、

竿縁に皮つきの細い丸太を使ったり、

 

板と網代を組み合わせたり、

といった、自由なデザインもあります。

 

格(ごう)天井

細長い角材を格子状に組んで、板と組み合わせたものを格天井と呼んでいます。

格天井は竿縁天井よりも格式が高く、玄関などにも使われます。

 

網代(あじろ)天井

 

茶室など、少しカジュアルな部屋で使われることも多いです。

柔らかいデザインです。

模様に見える部分は、薄い杉板や竹を編んでいます。

 

実はちょっとした料亭や和モダンの建物にも良く使われている、おしゃれな仕上げです。

 

同じような茶室の仕上げで萩や蒲を並べたもの。

素朴さを表現しています。

 

駆け込み(かけこみ)天井

屋根裏のように見せた、斜めになった天井です。

これも茶室の定番の仕上げです。

天井は実際の屋根裏ではなく、あらためて二重に作っているという凝った仕上げになっていることが多いです。

 

屋根の傾きなりに斜めになった天井は、

下屋になっている廊下の天井にも良く使われます。

 

梁あらわしの天井

天井を張らないで、構造体である梁などがそのまま見えるもの。

こちらは民家の天井です。

黒光りする丸太梁と高い天井がダイナミックです。

 

和室が天井に凝る理由とは

一般的な住宅の天井は平らでクロス仕上げなどが多く、

あまり凝ったものが無いのが普通と書きました。

 

これは、コストを下げるという意味もあるのですが、

洋風な建築だとあまり天井には凝らないというのもあります。

 

洋風といっても教会やモスクのような建物は別ですが

住宅のだと、フラットな天井が定番なんですね。

 

では、なぜ和風の建物では天井に気を配るのでしょうか?

 

明確な答えはありませんが、一つには、

日本人が「床に座る」暮らしをしてきたこと関係がある、

と言われています。

 

そう言われてみると、畳に座ったり、寝転んだりすると

椅子の時よりも天井に目が行きます。

 

理由はともあれ、天井にちょっとこだわると

和風の空間がより引き締まることは確かです。

 

逆もあり・・

 

洋室に畳と障子を入れただけの部屋は、和室として何か物足りなさを感じます。

 

これは、天井のデザインや高さが「茶室」向けになっていないことも要因で、

天井はそれだけ大事なパーツということがわかります。

 

住宅取り入れやすい和風・和モダンの天井のデザイン

和風の天井をいくつかご紹介しました。

ここからは、和洋関わらず、現代の住宅にも取り入れやすい

お勧めの和風・和モダンの天井デザインをお伝えします。

 

竿縁天井

和室の定番・竿縁天井ですが、

空間が引き締まるので玄関などにもおすすめです。

 

 

上が杉板の目透かし張り、下が竿縁天井です。

 

写真で比較してみると、フラットな板の目透かしと比べて

竿縁の方が奥行きを感じるかと思います。

 

材料の選定がコストが変わってきますが、スタンダードな価格で施工が可能です。

 

網代(あじろ)天井

本物の板や竹を編むような網代は高価なものです。

 

でも、編んだものがボード状になって

使いやすい建材になっている、

網代ベニヤというものもあります。

 

コストも抑えながら、おしゃれな和の仕上げをしたい場合におすすめです。

 

和室や床の間の他、玄関や廊下、トイレなど

アイデア次第で和にも、洋にも使える素材です。

こちらは、リノベーションした住宅玄関の天井を網代天井にした実例です。

網代の面積は畳1畳分ですが、玄関の雰囲気が優しく、奥深いものになります。

 

梁の見える天井

梁をあわしにした天井は、力強く、メリハリがあるのが魅力です。

 

キッチンを勾配天井にして、丸太梁をあらわしにしました。

 

以上は本物の構造の梁ですが

古材を購入してきて、デザインパーツとして内側から入れる場合もあります。

店舗なんかはたいていこのパターンです。

アンティーク好きのオーナーさんのリビングです。

着色した梁や古材を使い、インテリアをリフォームしました。

もともとは普通の白い壁・天井の部屋でしたが

イメージがガラッと変わりました。

 

増築した部屋では丸太梁も入れています。

古い梁はアンティークの照明や古建具と良く似合います。

 

天井の梁が見える場合も、

無塗装の仕上げだとナチュラルな雰囲気になります。

こちらは二世帯住宅の親世帯部分のダイニングです。

梁が見えた天井が、空間にリズムを与えています。

 

以上、おすすめの天井仕上げでした。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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