日本建築の中でも、茶室や数寄屋には、日常の暮らしの中では考えられないような静けさや、繊細な美しさがあります。
しっとりとした和風の建物が好きだったり、数寄屋造の料亭で食事をしたり、
そんなことがきっかけ『数寄屋』『茶室』に興味を持ち、
自宅に茶室風の部屋をつくりたい
数寄屋のように洗練された【和】のスペースをつくりたい
もっと落ち着く、雰囲気のある和室にリフォームしたい・・
こう思う方もいらっしゃるかもしれません.。
そこで今回から数回に分けて、茶室からひもとく和風のデザインとはと題し
茶室のエッセンスを取り入れた、ワンランク上の美しい住宅をつくる方法をお伝えしていきます。
茶室では寸法や材料に厳密な決まり事があったりします。ですが、ここではあまり堅苦しくないように、楽しみながら『数寄屋づくり』のエッセンスを取り入れる方法をご紹介していきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
茶室と普通の和室の違いとは?
数寄屋住宅というと、
今では高級和風住宅の代名詞のように使われることもあります。
でも、もともと『数寄屋』とは茶の湯のできる部屋、
つまり『茶室』のことを指しました。
そして茶室は、本来は豪華な部屋ではなく、
「市中の山居」(都会にあっても山の中にいるような住居)というように
簡素で、どこかしら詫びた雰囲気があるものです。
では、実際に
一般的な現代の住宅の「和室」と「茶室」がどう違うのか見てみたいと思います。
現代の住宅の和室
ごく一般的な例ですが、リビングの隣にある和室というとこういったタイプが多いかと思います。
これは、柱が見えない(壁の中に隠れている)ので「大壁」和室です。
柱が見える「真壁」の和室です。
長押(なげし:襖の上の高さで柱を水平方向につなぐもの)が付いていると
格調の高い部屋になります。
茶室や数寄屋
茶室といってもいろいろですが、
「間取り」以外の特徴は
・全体的に艶消しの仕上げになっている
・部屋の重心が低く、座った目線で落ち着くようにデザインされている
・壁はぬりかべが基本。壁や天井の表情が豊か
・各所に使われた木の素材感を感じる
などです。
美しい和室のキーワードは「陰影のある素材感」と「部屋の重心」
写真を比べてみると、同じように畳や障子は同じように使っていても
部屋の印象はずいぶん違ってきます。
一概には言えませんが、雰囲気の良い、洗練された和室にするポイントは、数寄屋の特徴でもある
「陰影のある素材感」と「部屋の重心」が大きいと感じています。
「陰影のある素材感」
柱だけでなく、床の間や天井の板、丸太や塗り壁など、
自然素材を中心に組み合わせると
複雑で奥行きのある表情が生まれます。
「部屋の重心」
洋室よりも低めの天井にしたり、窓を位置を低くしたり。
これは正座で座った時に目線を考えてのことです。
この2つの要素が、部屋を風情(ふぜい)のある雰囲気にしてくれているのです。
陰影のある素材で風情のある部屋をつくる
例えば和紙や、凹凸のある漆喰の壁、木の皮や土などが茶室の材料となっています。
塗装材料としては、漆など
底光りするようなものが似合います。
自然素材の積み重ねて、陰影のある空間を作っていきます。
これは、昔はそういった素材しかなかったからというのが理由ではありません。
利休の時代から、それも秀吉という天下人を招くのに、あえて田舎家風にしたり、
わざと粗末な納屋のような材料を使ったりと「詫び」た雰囲気をだすために工夫していたようです。
(そのせいで利休は派手好みの秀吉に嫌われたという説もありますが)
この「詫び」という感覚、
派手なものや豪華絢爛なものを避け、
簡素でつつましやかな中にも「美」を兼ね備えた様子となっています。
相反する物を取り入れる、高度な美意識があったのだろうと伺えます。
昔の人の感覚と随分違っている現代の私たちですが、
部屋の中に居ながら自然を感じる、詫びた雰囲気の和室には心が和みます。
贅沢な数寄屋でなくても、少し「詫び」の感じられる色味の塗り壁材や、
低い位置の窓などを取り入れるなどで
普通の和室がより落ち着く、和みの空間になっていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。