和の住宅で美しく暮らす「露地」がつくる非日常へのいざない

茶室や数寄屋、伝統的な日本家屋をヒントにワンランク上の美しい住宅をつくる方法をシリーズでお伝えしています。

 

四回目の今回のテーマは、茶室へのアプローチである『露地』についてです。

「露地」というと、路地と違うの?

と思われる方も多いかもしれませんね。

 

「露地」とは(お茶の宗派によっては路地とも書きます)

茶事のための茶室へのアプローチや庭のことで、茶庭とも言います。

 

門をくぐって茶室にたどり着くまでの小道には

日常から非日常へといざなう演出的な意味もあり、

ただのアプローチとは一味も二味も違います。

 

家が普通の家であっても、

庭やアプローチにこの露地のエッセンスを取り入れると

洗練された渋い雰囲気にすることが可能です。

 

今回は、そんな露地のなりたちや、

露地と普通の庭の違いを写真を交えて解説します。

 

どうぞ最後までお付き合いください。

茶室と露地の関係

お茶をやっている人にとって、茶室というと

広さや床の間の位置、水やの使い勝手など

まず機能面に目が行きます。

 

茶室というものは、建物というよりも

一服のお茶を美味しくいただくための

いわば「茶道具」なので

配置や設備が大事なのはもちろんのことです。

 

そして、

その茶室と切っても切れない関係にあるのが

茶室前に広がるアプローチ空間である『露地』なのです。

これがなければ茶の湯空間は成り立たない、重要な舞台装置です。

 

露地は通路だけでなく、茶室に付随した庭全体をさします。

 

理想は「市中の山居」

露地のつくりは茶室と同様に、豪華絢爛なものは避け、

簡素でつつましやかなものが良いとされています。

 

露地のありようは昔から

『市中の山居』が理想とされてきました。

 

『市中の山居』とは、

都会の喧騒の中にあっても、

山の中にいるような静かで風流なたたずまいのこと。

 

武家や貴族、裕福な町人のなかで流行した茶の湯ですから

遠方から珍しい石や花を取り寄せたり、といった具合に

贅をつくそうとすればいくらでもできます。

 

でも、そこをあえて簡素に、つつましやかにという

教えも含まれています。

とはいえ、一方では美を究極まで追求していた茶の湯空間。

露地も華美でないけれども洗練された、美しい空間でなければならなかったのです。

 

身近に自然が少なくなった現代の住宅やマンションでは、

露地の自然に見えるような造形や

狭い場所でも奥行を出す手法、

そして全体に流れる清々しい空気感は積極的に取り入れたい所です。

 

茶庭・露地の特徴は?

露地の役割は、訪れた人を俗世間の喧騒から逃れさせること。

 

そのためにどんな工夫があるでしょうか。

 

こちらは柏市にある柏の葉公園の中にある、

茶室の露地です。

まさに『市中の山居』の幽玄な雰囲気で

一見するととても真似できそうにありませんね。

 

現代の住環境では個人宅では難しいですし、

実際茶庭専門の業者でないとここまでの仕事はできません。

 

ですが、工夫次第では

気軽にアプローチでこんな「和」の雰囲気を楽しんだり、

最低限の取り合わせで露地をつくることも。

 

露地にはどんなポイントがあるのか、

普通の庭とどう違うのか見てみたいと思います。

 

露地の飛び石

まず目に飛び込んでくるのが地面の上に置かれた飛び石です。

 

歩きやすさと、景色(見た目)の良さを考えて配置された茶室の飛び石は

見た目4:実用6とか、見た目4:実用6の割合で置くとか。

 

お茶の長い歴史の中で、置き方ひとつとっても洗練を重ねています。

 

代表的なものは

石を雁行して打つ雁打ちや

 

互い違いに配置する千鳥打ち、

 

石をまとめた延段、

 

述段でも石の大きさによって表情が変わります。

 

長い露地ではいろいろとデザインを取り混ぜて

歩く人が楽しめるような工夫があります。

 

数寄屋を見学する時は足元の石の配置も楽しみなのですが、

特に桂離宮では様々なバリエーションの飛び石が見られます。

 

小さな玉石と切り石を組み合わせたり、

 

こんな斬新なデザインも。

 

決まり事があるようで、無いような?

結構自由にデザインしてますね。

ただ四角い石が並んでいたり、砂利がしいてあるだけの通路より

見ても、歩いても楽しいですね。

 

アプローチや庭の飛び石の配置も、

歩きやすさとデザインを兼ね備えた露地風にしてみると

足元がぐっと引き締まります。

 

こちらは帝国ホテルの4階にある茶室、「東光庵」です。

飛び石も含め本格的なお茶室が気軽に見学できます。

露地の植栽

露地を歩くと、バランス良く配置された樹木に目が行きます。

植栽にはどんなポイントがあるでしょうか?

 

樹木は基本的に緑の薄い常緑樹と落葉樹をバランスよく配置する

珍しい木や外国産の木は避け、なるべくその土地の気候にあった樹木を用いる

多すぎる樹種を使わない

樹木の大きさ、形は自然なままがよい。珍しい形のものも避ける。

生育の早い木は避ける

派手な花の咲く木や、毒や棘のある木は避ける

出典:わが家に茶室をつくるには 淡交社

 

なるべく自然の山のように・・

というのが信条です。

 

これは茶室に行ける茶花のありようと同じで、

生け花では派手なものや人工的な花も積極的に使うのに対し、

茶花は派手な色を嫌います。

茶花も野にあるように、が理想とされています。

 

露地の写真を良くみると

派手な花を咲かせる木は無いし、大きすぎる木もありません。

庭園というよりも雑木林のように見えます。

 

なるべく土地にあった樹木を選んで、

自然な形になるように、と意識するだけでも

違ってきますね。

 

東京ミッドタウンの中にある庭園も参考になります。

お近くに行った際には立ち寄ってみて下さい。

 

蹲踞(つくばい)

茶室に入る前に、お客さんが手と口を清めるためのもの。

蹲踞はエクステリアのアイテムとしても人気なので

和菓子屋さんや和食レストランの庭で見た人も多いかもしれませんね。

 

柄杓が置いてありますが、

茶事では実際に手や口を漱ぐのが作法になってます。

桂離宮にもありました。

 

蹲踞などの水盤は清浄なイメージを作り出します。

 

茶の湯空間には欠かせないものですが、

「和」の庭づくりを考えたうえでも骨格となるアイテムです。

露地の雰囲気を出すには

大がかりな植栽や石の配置をするほどの規模ではなくても

露地の雰囲気を出したい場合。

 

そんな時におすすめアイテム、

それは・・

 

蹲踞(つくばい)です。

上の写真のものは正規の配置にのっとったものなので

たくさんの石を使っています。

 

でも、おすすめは手水鉢(水を入れる鉢)だけ置いた

シンプルなもの。

 

前述したように、水盤は清浄なイメージのアイテム。

それだけで庭やアプローチに清潔さや趣を与えてくれます。

 

手水鉢は石を使うのが本当ですが、

充分な庭のスペースがないとしっくりきません。

 

その場合、陶器や、金属製の水鉢などで代用できます。

 

陶器のものはホームセンターなんかで手に入れることも可能です。

Amazonでも買えました^^

 

手水鉢を自宅の庭に置く時に注意したいことは、

綺麗な水が保てるように、

メンテナンスしやすい形にしておくこと!

 

そのためには大きすぎるものを置かない、

砂利の下には排水のために桝を設けるなど

設備面で使いやすいような工夫が必要です。

 

お庭の雰囲気づくりに効果的なアイテムです。

庭づくりの計画段階から蹲踞も加えてみてくださいね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。


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